
こんにちは。
 相馬一進(そうまかずゆき)です。
 「雪は天から送られた手紙である」
 これは世界で初めて人工雪を発明した
 物理学者の中谷宇吉郎さんの言葉です。
 これ、素晴らしいフレーズだと思いませんか?
というのも、この言葉の意図は、
 「手紙のように多くの情報が雪から読み取れる」
 ということです。
 この意図を伝えるために、
 「天から送られた手紙」という表現をしたのが
 本当に素晴らしい。
そもそも、人工雪の研究をおこなった中谷さんは、
 雪の結晶の形状に法則性を見つけ出しました。
 たとえば、-15℃前後で水蒸気が多い環境では
 雪の結晶が樹枝状結晶になります。
 つまり記号で言えば「アスタリスク(*)」のような
 複雑な形状になるのです。
 ところが、同じ-15℃前後でも水蒸気が少ないと
 角板のようなシンプルな形になります。
 他にも「気温が-6℃位で
 水蒸気が多いと針の形状になる」とか
「気温-3~-10℃か、または-22℃以下で
 水蒸気量が少ないと角柱になる」
といったように、雪の結晶と湿度や気温の関係を
 法則にまとめあげたのです。
 そして、その法則性から逆算して
 空の状態を推定する方法も見つけました。
 一例をあげると、降ってきた雪の結晶が針の形状なら、
 「この雪ができた雲は-6℃位だ」
 などと予測ができるわけですね。
さて、冒頭に引用した中谷さんの
 「雪は天から送られた手紙である」という言葉は
 こうした知見を踏まえて生まれました。
 この言葉を知ったとき、
 一流の専門家のパラダイムに触れられた気がして、
 私はとても感動しました。
 なぜなら、“論理知”と“感覚知”が
 見事に合わさったフレーズになっているからです。
 ここで言う“論理知”とは、論理的な知識を指します。
 一方で感覚知とは、体験で得られる“感覚知”な知識を指します。
 ご参考:感覚知のある言葉
 つまり、雪の結晶の法則性という“論理”と、
 「手紙のようだ」と長年の研究で味わった“感覚”が
 融合して生まれているのです。
 もし知識が少なかったり、経験が浅かったりしたら、
 決してこのような言葉が出てこなかったでしょう。
 シンプルなフレーズで雪の結晶の価値が伝わってきて、
 コピーライティングとしても一級品です。
 私自身、専門家として知見を述べるときには、
 中谷さんのように論理知と感覚知を合わせた表現を
 使っていきたいと思います。
 あなたも専門家として何かを語る場合は、
 論理知と感覚知を合わせるように心がけてみてください。
 もっとも、これは一朝一夕で身につくスキルではありません。
 現時点でこうした表現ができなかったとしても
 焦る必要はないでしょう。
相馬一進




















