
こんにちは。
相馬一進(そうまかずゆき)です。
今回からは、「ルンバ なぜ倒産寸前?」と題して
シリーズ形式の記事をお送りします。
ロボット掃除機といえば、
誰もが思い浮かべる「ルンバ」。
そのルンバを展開するアイロボット社が、
現在、倒産寸前だということを
あなたは知っていますか?
ロボット掃除機の市場が拡大し続ける中、
ルンバの売上は3年連続で右肩下がり。
株価は最盛期の70分の1まで下落し、
アマゾンによる買収の話も立ち消えとなりました。
なぜ、勝ち組だったルンバが
今では一人負けの状態なのでしょうか?
その理由は、ルンバが古いマーケティングの理論の
落とし穴にハマってしまったからです。
実は、この古い理論にとらわれて
ビジネスで苦戦している人は非常に多いのです。
あなたも、同じ落とし穴にハマっていませんか?
この記事を読めば、落とし穴を避けて、
より楽に売上を上げる方法がわかります。
ぜひ最後まで読んでください。
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『 ルンバ なぜ倒産寸前?(第1回目)』
最強ブランドのルンバ転落の理由
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さて、従来のマーケティング理論では
「カテゴリー名を聞いたときに、
真っ先に思い出してもらえるのが最強のブランド」
と言われています。
ここでいうカテゴリー名とは、
ハンバーガー屋とかコンビニなどのグループのことです。
たとえば、「ハンバーガー屋といえば?」と聞かれたら
あなたはどんなブランドを思い出しますか?
すぐに思い出してもらえるブランドは
買うときに最優先の候補になりやすいのです。
では、ここで質問です。
「ロボット掃除機」といえば、
あなたはどの商品名を思い出しますか?
そう、「ルンバ」でしょ?
ルンバ以外の商品名を思い出す人は、
まずいないのではないでしょうか。
そう考えると、ロボット掃除機のカテゴリーにおいて
ルンバというブランドは極めて強いです。
ですので、古い理論で考えるのなら
ロボット掃除機のカテゴリーにおいて、
ルンバは最強のブランドなんです。
では、なぜ最強のブランドであるルンバが
倒産しかかっているのでしょうか?
もしロボット掃除機の市場規模が
年々小さくなっているなら、
ルンバの売上が一緒に下がっても不思議ではありません。
でも、ロボット掃除機の市場規模は
年々大きくなっているんですよ。
ご参考:
業務用掃除ロボット 2024年に150億円規模に
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000035568.html
なのに、ルンバの売上は右肩下がりなんです。
この理由って、何だと思いますか?
それは、ルンバが価格競争に
負けてしまっているからです。
具体的には、ルンバよりも価格が安い
中国製のロボット掃除機ばかりが売れているんです。
中国製の同じくらいのスペックの
ロボット掃除機と比較すると、
ルンバは大体2〜3倍くらい高いんです。
つまり、ルンバは値段が高いので売れていないんです。
しかし、ここである疑問が生じます。
なぜなら、古いマーケティングの理論では
次のように言われているからです。
「ブランドができていれば、
価格競争に巻き込まれず高い値段でも売れる」と。
この理論が本当なら、
ルンバが値段が高くて売れないのはおかしいですよね?
でも実際には、ブランド力があるルンバが
価格競争に巻き込まれ敗北しているんです。
なぜだかわかりますか?
これがわからないと、あなたのビジネスも
価格競争に巻き込まれるかもしれません。
また、売上が下がる原因になる可能性もあります。
もったいぶらずに答えを発表しましょう。
「ブランド力があれば価格競争に巻き込まれない」
という理論は、「ごくわずかな条件のときのみ」
有効だからです。
「ごくわずかな条件」とは、成金向けの、
虚栄心を満たすためのアイテムであることです。
例を挙げましょう。
私が綿100%の半袖シャツを調べたところ、
価格はユニクロが1,990円、エルメスが382,800円でした。
いやー、エグい価格差ですよね!
同じようなデザインの白いシャツなのに、
エルメスはユニクロの200倍の価格です。
なぜこれほど価格が違うのでしょうか?
その理由は簡単です。
エルメスの場合、周りの人に
「私はそれだけ高いものを買えるんだぞ」
というメッセージを伝えるための手段になるからです。
社会的地位の高さや経済的な成功を
アピールするためのアイテムなので、
値段は高ければ高いほど良いのですね。
このような背景があるので、
成金向けの虚栄心アイテムは、
価格競争に巻き込まれにくいんです。
服以外だと、腕時計、ジュエリー、バッグ、
車、アートなどの高級品が該当します。
一方で、それ以外のカテゴリーの場合
ルンバのような有名ブランドでも
価格競争に巻き込まれます。
実際に、ルンバは中国製のロボット掃除機の
2〜3倍高いだけで、客離れが起きてしまっていますよね。
つまり、古い理論は成金向けの虚栄心アイテムと、
その他の商品のマーケティングを混同してしまっています。
だから、勘違いする人が多いんです。
さて、あなたはこの話を聞いてどう思いましたか?
マーケティングを学んでいる人ほど、
納得できないかもしれません。
なぜなら、有名ブランドは
有名でないブランドに比べて、
少し割高でも買ってもらえるからです。
この割高で買ってもらえる部分のことを、
マーケティング用語で「価格プレミアム」といいます。
「価格プレミアム」とは、
平たく言えば「上乗せ価格」のことです。
では、有名ブランドは、無名ブランドに
どれくらい価格を上乗せしても
買ってもらえるのでしょうか?
ここからは、あなた自身のビジネスの話として
聞いてくださいね。
これがわかると、あなたが自分の商品に
値段をつけるときに失敗しなくなります。
知っておいて損はないでしょ?
この「価格プレミアム」についての
研究をご紹介します。
静岡県立大学の岩崎教授の研究では、
1,000人を2グループに分けて
異なるコーヒーの写真を見せ、
いくらまでなら支払うかを調べました。
第9回:ブランドが生み出す4つのチカラ
https://www.uchida.co.jp/system/report/20220050.html
結果は、スターバックスのコーヒーが平均317円、
無名店のコーヒーが平均263円でした。
両者を比較すると、スターバックスの方が
20.5%も割高で買ってもらえることがわかります。
つまり、価格プレミアム(上乗せ価格)は20.5%です。
では、日本ではなく海外では
価格プレミアムはどれくらいでしょうか?
結論からいうと、アメリカでも同じくらいでした。
アメリカのアイオワ大学の研究をご紹介しましょう。
2021年に、アメリカの消費財6,500ブランド、
200カテゴリーを調査したものです。
数が多く、非常に信頼性が高い研究です。
What Drives Brand Equity? A Comprehensive Study of Price and Volume Premiums
https://www.researchgate.net/publication/354816702_What_Drives_Brand_Equity_A_Comprehensive_Study_of_Price_and_Volume_Premiums
結果は、有名ブランドの商品は
有名でないブランドの商品と比べて、
平均で20%高い価格で販売されていることがわかりました。
ですので、日本でもアメリカでも
価格プレミアムは20%くらいなんです。
では、ここまでの話をどのように
あなたのビジネスに当てはめれば良いのでしょうか?
ここでは、成金向けの虚栄心アイテムでは「ない」
場合について考えます。
結論から言いましょう。
もし、あなたの商品が業界の中で有名なブランドなら
無名ブランドよりも20%ほど高い値段をつけても、
売れるでしょう。
それ以上高くなると、客離れが起きやすくなります。
逆に、あなたの商品が無名ブランドなら
同じ業界の有名ブランドの商品よりも、
20%位安く売ることが重要になります。
さて、ここまで読んであなたは疑問に思いませんか?
「どうしてルンバは、中国製のロボット掃除機の
2〜3倍もの価格になっているのだろう?」と。
逆に言えば、なぜ中国製のロボット掃除機は
ルンバに比べて圧倒的に安価で
販売できているのでしょうか?
この疑問の答えを、次回、詳しく解説しますね。
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以上、「ルンバ なぜ倒産寸前?」の第1回目でした。
このシリーズは2回で終わりなので、
次回が最終回です。
次回も、多くの起業家がハマってしまっている
古いマーケティング理論を解説するので、
楽しみにしていてください。